社長メシ採用成功企業インタビュー第五弾 ~失敗続きだった新卒採用。社長メシで成功した理念共感型採用〜
社長メシ採用成功企業インタビュー第五弾
2020年の東京オリンピックに向けて新国立競技場の建設や選手村の設立など日本のインフラ整備が急ピッチで進められている。それゆえにインフラ企業における労働力の需要は増えている。それにも関わらず新卒採用市場においては採用が困難な建設業界。クリテック工業も新卒採用に苦戦していた企業の一つ。クリテック工業は、調査、設計、製造、販売、施工と一連の動きをすべて担うことができ、何事にも一生懸命に取り組む歴史ある会社。国のインフラを支える一員としての使命感を持った学生を採用すべく、社長が自ら採用する社長メシを2019年4月から2019年9月までの半年間利用し9回の食事会で15名の学生とマッチング。その結果、1名の採用に成功した。今回はその採用の秘訣に迫る。
若林社長の経歴と新卒採用に注力する理由
「経営理念に共感し想いを持った学生と働いて、一緒に会社を創りたい」
若林社長の新卒採用の理由はここにありました。
過去に社会貢献の一助としてニート・フリーターを中途として採用を行っていました。しかし、経営理念を軸に自分で判断して行動できる社員を育てる経営を行っていこうと経営方針を変えた途端、彼らは全員仕事を辞めてしまいました。
彼らが辞めた理由は「そんなことを望んでいない。僕たちにとって理念は重荷だ」
ここで若林社長は中途ではなく、新卒採用に注力しようと決めました。会社の文化形成と時代の変化への挑戦、及び未来の理想の組織の実現のためである。
しかし業界的にも新卒採用はもちろん女性採用も困難であったが、なぜ社長メシでは女性採用が成功したのか。
Q1:今までどのような採用サービスを利用し、採用活動を行ってきたのでしょうか?
ここの数年は、人材紹介と成果報酬型の採用イベントに参加していました。それまではナビサイトを含めたほぼすべて採用活動にチャレンジしてきました。ニートの中途採用をしていたのは2005年から2008年頃まで行っていました。その後2010年に新卒採用を始めたのですが、初年度は社員からは絶対的反対にあいました。もっとも初年度採用は、成功し現在も活躍しています。しかし第二期生(2012年度)の採用は国公立学生など学歴がいい学生を採用できたのですが、風土に合わず全員が辞めてしまいました。それがトラウマになり採用で理念を強調しないようになっていきました。
Q2:2019年は社長メシを利用して頂いておりましたが、他採用媒体は利用されたのでしょうか?
新卒採用にもう一度気合を入れようと社長メシを利用し始めたわけですが、実は他の採用媒体も利用していました。学生と会う「合同説明会」に参加しましたが、4回参加して100名以上の学生と会うことができました。その学生たちに対し企業説明を行ったのですが、1名も次回選考に繋がりませんでした。売り手市場といいつつも、誰も選考に進まないというのは初めての体験でかなりショックを受けました。イベントでビジネスモデルなど会社のプレゼンをしても学生には全く響かなかったです。ここで初めて学生にあった訴求ができていないことに気づいたんです。
Q3:社長メシでは食事会の時点でお互い会いたいと思った学生と会えるので、いきなり双方の会話ができます。
本当にそうなんです。他のイベントと違って近い距離で学生と直接会える。紹介とかイベントでは、本当に会いたい学生に会えるかどうかはわからないんですよ。会いたい学生というのは当社に興味がある学生という意味です。さらに、イベントで集まってくれる学生は、弊社の採用像に合わない学生が多く、もったいないことをしたなって思いました。でも社長メシは社長と学生が双方に会いたいと思っていて、双方で価値のある会話ができる、想いをダイレクトに伝えることが出来る。ここが一番の社長メシの魅力だと思います。
Q4:若林社長自身、自らの採用の失敗を通じて理念共感が採用には必要と気づいたわけですが、社長メシでそれは実現できたのでしょうか?
社長メシはそもそも学生の質が他の採用媒体とは違います。
社長に会いにくるだけあって成長意欲の高い学生に出会えました。マッチングした学生の数としては少なかったですが、弊社の文化に合うコツコツ頑張れる学生が食事会に来てくれました。採用に繋がった学生はひたすらメモを取る女性でした。本人がした質問だけでなく、他の参加者がした質問を丁寧にメモをしていて。飲み会なのにそこまでする?と正直驚きました(笑)。でもこれって食事会だからこその価値で、こういった対話の中からお互いに理解を深め、社長の理念と学生のビジョンとが共感するポイントを作ることが出来たと思います。
Q5:社長メシという双方のマッチングがあったからこそ、ピンポイントで素敵な学生に出会えたのですね!参加してくれた学生に対して、若林社長が食事会で工夫した点はありますか?
「面接」から「面談」という形式に変更したことが一番大きいと思います。こちらから質問するのではなく、できるだけ参加者の質問に答えるようにしました。本人が聞きたいことであれば、興味を持つし学生自身が受け入れやすいんだなって感じました。本来はビジネスモデルとかを伝えたい気持ちはありますが、それよりもどういう想いで仕事をしているとか、学生が実際弊社で働いてどんな成長ができるのか?をイメージしてもらえるように話を展開することが多くなりました。
学生との目線を合わせて、ありのままの会社を知ってもらうこと。それが社長メシの食事会では有効だと思います。
Q6:学生の目線に合わせること。学生にとっても食事会に参加しやすくなりますね。ちなみに食事会後の工夫はありましたか?
SNSの活用です。食事会に来てくれた学生とのやり取りは、LINE@を活用することにしました。今まではメールでのやり取りをしていて返信が全然なかったのに、LINE@に変えた途端に全員から返信が来て(笑)やっぱり時代の変化と学生の目線に合わせていくことは重要だと身に沁みました。
採用に繋がった学生にはその後も何度か社長メシに参加してもらいました。もちろん他の社員との面談も行いましたが、社長メシは参加学生が変われば話題も変わるので、同じ学生であっても毎回感じてくれることは違いました。食事会に参加する中で会社理解を深めて、自身が働く道を弊社で見つけてくれればいいと思っていました。食事会以降もSNSを活用して連絡を取りつつ、学校の話なども聞きながら素のお互いを理解するようにしました。
Q7:様々な工夫をされた結果、「理念共感採用」を実現しましたが、最大のポイントを教えてください。
最大のポイントは社長と働きたいこれに尽きます。
こちらから話すというよりは、学生からの質問に答えることを肝に銘じていました。学生が主体性をもって食事会に臨んでくれるように心がけました。だから採用に繋がった学生はビジネス内容というよりは、私の考え方に惹かれてくれたのだと思います。ビジネスモデルはあくまでも安定性を図る指標でしかなくて。会社という大枠を理解してもらうものです。私が学生目線になって想いや理念を語り、「この社長についていく」と学生に考えてもらうことが社長メシで採用する最大のポイントだと思います。
Q8:学生目線に合わせるのは大切ですが、意外と難しいことでもありますよね。
私自身も気づくまでに何年もかかりましたし、新卒採用開始10年目でやっと本質的な採用にありついたのかなと思っています。
新卒採用を通して私自身が成長した部分は、やはり学生への接し方を細部まで気を遣うようになりました。社長メシをやって自分自身も再認識したのですが、学生を採用できないのであればその学生の目線に合わせるべきです。
今の学生の中には、「起業したい!」と言っている比較的意識の高い学生でさえも食事会後のお礼の連絡をしてこない。何かをしてもらったら感謝を伝えるという当たり前のことをしないのです。社会的な風潮かもしれません。だからこそ自分からも連絡をすることは必要だと思うようになりました。もちろん会社の理念は曲げてはいけないと思いますけどね。
Q9:社長自ら採用活動に乗り出す。ここに必要性と重要性があるように思います。
確かに2時間という時間は社長にとっては貴重です。でも学生のリアルの話を聞くこと、今の就活市場を知ることも採用活動の1つだし、本当にいい人材を採用したいと思っているなら社長もそこまでしなくちゃいけない。弊社のようにニッチで新卒採用が難しい会社だからこそ社長が出る必要があると思います。やはり業界という部分で絞られてしまっては会える学生にも会えなくなってしまいますからね。人材獲得は、会社の根幹をなすことの一つであると思っています。その人材を採用するために誰が適任なのか?というと自分の会社のことを一番知っている人、つまり社長なんです。
Q10:今回は1名社長メシで採用して頂きましたが、21卒はどのようにお考えでしょうか?
2~3名の採用を考えています。弊社では短いスパンで採用をしようと考えてはいなくて、会社に携わってもらいながら採用活動をしていこうと考えています。21卒学生に関してはインターンなど通常業務で働いてもらうというよりは、今までに弊社で取り組んでいないこと(例えばマーケティングやPRなど)を一緒にやっていきながら採用につなげていきたいと思っています。後は他の採用媒体(紹介やイベントなどでの接触学生)から来る学生にも社長メシに参加してもらおうと思っています。やっぱりリアルで会って語り合うことが弊社には必要だから、メインは社長メシで採用活動を進めていきます!
Q11:最後に社長メシを使ってほしい企業と利用企業様へのアドバイスをお願いします。
社会性・独自性がある会社が新卒を採用できていないのであれば、社長メシを使うべきです。
自分たちの魅力を伝えることが出来るのが社長メシです。重要なことは学生が知りたいことを話してあげることです。そのため、できる限り学生に質問をしてもらい、質問に回答するようにしています。そうすることが学生にとっても有意義な時間にもなるからです。学生から聞かれなくても伝えていることがあります。それは、人生の中で直接、接点を持てる人数は3万人程度と言われており、数少ない接点を持てた私とご縁のある学生には、少しでも役に立つ情報提供をするようにしています。
食事会で聞いたこと、感じたこと、学んだことは必ず持ち帰って社会に役立ててほしいと伝えています。もちろん採用活動ですから、採用することがゴールです。しかし学生に伝えたことで、その学生が社会に役立つことをしたら、食事会の場を準備した社長としても社会に役立つことをしたことになるんです。それが最終的には会社としても社会貢献をしていることに繋がることになっています。
インタビューから見えてきた、採用の新しい形
若林社長が見つけた理想の採用のカタチを社長メシで叶えられた事をとても嬉しく思う。採用活動において社長が出る意義、そして必要性と重要性を若林社長が証明してくれたのではないだろうか。
若林社長との出会いが、学生にとって人生を変える大きな出会いだったかもしれない。明日からの自分が変わるきっかけだったかもしれない。
日本中の若者が本当に働きたい会社つまり「ついていきたい社長」を見つけられるようにこれからも社長メシは進化し続けようと強く心に誓ったインタビューだった。
インタビューにご協力いただいた若林社長、素敵なお話ありがとうございました!!
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